学生時代は空手一筋。篠原さんは数々の大会で好成績を収め、大学の推薦も来る実力者でした。それでも空手を続けることに固執せず、「手に職をつけたい」と思った篠原さんは、居酒屋を営んでいた父の背中を追うように料理の道へと歩みだします。
料理学校で基礎を学びながら、父からの紹介を経て「熊魚菴たん熊北店」で修業を始め、京都の「山玄茶」では若くして調理主任を任され経験を積みました。27歳の頃、父から突然言われた「店用に一軒家を買ったから戻って来い」の一言で、地元・湖南市で独立することになりました。
湖南市で構えた「日本料理しのはら」は、地元では珍しい懐石料理店でしたが、その味が注目され全国からも予約が殺到する人気店へ。各地から来られるお客様との縁がきっかけで、東京銀座への移転に挑戦。2016年「銀座しのはら」を開店すると、ミシュランガイド東京で2年連続一つ星、現在4年連続二つ星を獲得する名店となりました。

お客様に喜んでもらうためならどんな食材でも活用するのが篠原さんの信条。ふるさとである滋賀での幼少期や、料理人として歩んできた今までの経験を力に、型にはまることない閃きを様々な食材を組み合わせて形にしています。高級食材はもちろん、和食には向かないといわれる食材も篠原さんの巧みな技により懐石料理へと生まれ変わります。
幼い頃の自分を育てくれた地元の食材に対する思い入れは深く、現在でもコースを彩る食材の一つとして欠かせません。各地から食材が集まる東京にあっても、特に野菜は地元のものが一番だそうで、恵まれた気候や農家さんの努力が作る鮮度の高い野菜は、全国トップレベルに美味しいと太鼓判を押します。他にも地元のジビエ、中でも毎年欠かさず仕入れる湖南市三雲の猪や、野洲川周辺のすっぽんや川魚なども季節の彩に欠かせません。地元自慢の食材と全国から集めた旬の食材で「銀座しのはらの田舎料理」が完成します。